【サッカー部】「恩返しの気持ちを込めて…」加藤優一が“立教の専属カメラマン”父・覚さんに見せたい姿

[11月28日 関東大学サッカーリーグ戦2部第19節 立大0−0明学大]

「試合を観に来てくれても後半途中から出場とか、出られずに終わることも結構多くて。悔しい気持ちもあるので、残り3試合で恩返しの気持ちを込めて目の前で点を取る姿を見せたいです」。スコアレスドローに終わった試合後、加藤優一(コ4=東海大相模)は父・加藤覚さんへの思いをしみじみ口にした。

ウォーミングアップを行う加藤(中央)

一番近くで見守ってくれる人への思いを胸にピッチに立つ。

父・覚さんは加藤が1年生の頃からサッカー部の選手たちの写真を撮り続ける“立教の専属カメラマン”。試合で撮影した写真はフェイスブックに投稿し、友達申請をすれば選手本人や保護者など誰でも閲覧・利用可能な状態にしている。カメラを構えるのはAチームが出場する関東リーグだけではない。サタデーリーグやインディペンデンスリーグなど全てのカテゴリーの試合に足を運び、過去には1日で埼玉と茨城の2会場を掛け持ちしたこともあるという。

この日もすでに試合開始前にゴール裏で機材の準備をしていた覚さんは「ひとつの応援の形として写真を撮りたいっていう気持ちが強いです。勝ったとか負けたとかじゃなくて、“良い写真が撮れたかどうか”が大事かな」と笑う。「戦術とかプレーに関しては一切口を出さないようにしています。優一が試合に出ようが出まいが応援はするし、なによりも写真を通してチーム全体を応援したいんだよね」。

ゴール裏でカメラを構える覚さん。撮影した写真は、試合観戦に行けない地方出身選手の保護者からも評判となっている

父と息子。ピッチ上での約12分間の“共演”は、特別な時間となった。

0−0で迎えた82分。小林(コ4=東農大三)に代わり背番号27が途中出場を果たす。「ガミさん(池上礼一監督)に『1点取ってこい』って言われて、絶対決めるぞって」。ベンチからの期待を背負いピッチに入ると、父がゴール裏でカメラを構える敵陣方向へ走った。

86分には中盤で木本(文4=都立駒場)からパスを受けると、2度体勢を崩しながらもボールをキープ。87分にも堀(異2=ジェフユナイテッド千葉U−18)のスローインからバイタルエリアに侵入し、木本とのパス交換からシュートを放つなど、少ない出場時間でも持ち味は発揮した。

試合はそのままスコアレスドローで終了。加藤は今季2得点目となるゴールを奪うことはできず、降格圏の相手と引き分ける結果となったが「勝ち点1を取れた点に関してはそこまで悲観する必要はない」と前を向いた。息子がプレーする姿を目の前で見守った覚さんも「やっぱり親だから優一がベンチで呼ばれたらパッとカメラを向けるし、いつもより写真の枚数は多くなっちゃうよね」と頬を緩め、撮影した写真をうれしそうに確認していた。

ゴールを見つめる加藤。カメラを構える覚さん(写真手前)の存在は「最初の頃はちょっと意識していたけど今は慣れちゃった」という

今年3月末からAチームに帯同し、今季はここまで関東リーグ15試合に出場。第9節・神奈川大戦(●2−3)では後半アディショナルタイムにリーグ初得点を決めたが、新型コロナウイルス感染拡大防止策に伴う取材制限により、会場に覚さんの姿はなかった。第17節・拓大戦(△2−2)には3歳上の姉と母も観戦に訪れた。地元の相模原ギオンスタジアムで今季初となる有観客での開催。舞台こそ整ったが、この日は加藤の出場はなく、またしても“すれ違い”となってしまった。

「神奈川大戦は試合後にバスでLINEを見たら連絡が来てて。関東初得点だったからもちろん俺はうれしかったけど、両親はもっとうれしかったんじゃないかな。有観客試合は東京国際大戦(12月13日)もあるし、その時はまた母も来ると思う。やっぱり最後は、家族の前で決めたいっていう気持ちが大きいです」

支えてくれる人への感謝の気持ちは、引退に際して4年生が書く「引退ブログ」にもつづった。

タイトルに選んだのは、覚さんが撮影する写真のコピーライトである「photo by S.K.」。家族の存在や誰かのために頑張る姿勢の大切さなど、自らの信条を約2400字の言葉に込め、文章の最後にはこう記した。

「僕は、両親のために頑張って活躍したいと決意していましたが、それが同期なのか、先輩なのか、彼女なのか、誰でも何でもいいんです。見てくれる人はいるし応援してくれる人はいる。今こうやってAチームにいる僕だから、尚更感じたことなのかもしれないけれど、誰かのためにという気持ちを少しでも持つことで、もう一踏ん張りできるかもしれません。」(原文ママ)

大学4年間はもちろん、サッカー人生を語る上でも家族の存在は欠かせない。リーグ戦3試合を残し、恩返しへの思いは日を追うごとに強まっている。カメラ越しに見守ってくれる父に見せたい姿はただひとつ。目の前で、自分がゴールを決める姿だ。

(12月5日 小根久保礼央)

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