【軟式野球部】 延長戦、劇的サヨナラ勝ち!野球の神様は立大の絆に微笑んだ

◆令和7年度東京六大学軟式野球連盟秋季リーグ戦◆

10月3日 対明大 駒沢オリンピック公園硬式野球場

リーグ戦も終盤に差しかかる7回戦。ここまで1勝4敗1分と波に乗り切れないチームにとって、1巡目が雨で延期となった明大との初対戦は後半戦の行方を占う重要な一戦となった。

先発を任されたのは田口(済2)。先日の慶大戦では7回1失点と好投し、今季初の白星の立役者となった。この試合でも田口は粘りの投球を見せる。制球に苦しむ場面はあったものの、要所では持ち前の勝負強さを発揮し7回まで明大打線を無失点に封じた。

熱投を見せる田口

田口の力投に応えたい立大打線だが、リーグ屈指の防御率を誇る相手先発・前田に苦しめられる。7回までに放った安打は尾上(ス2)の右安打のみ。無四死球、9奪三振という圧巻のピッチングを前に、二塁ベースが遠い展開が続いた。

8回表、スコアボードに0が並ぶ投手戦がついに動きだす。明大の攻撃は1番から始まる好打順。先頭打者への四球をきっかけに、相手打線に火がついた。三塁打で先制点を奪われると、続く二ゴロと左前打で加点を許し3失点。長いマウンドへ果敢に挑んだ田口だったが、8回2/3で仲間にバトンを繋いだ。

田口の熱投を受け継ぎマウンドに立ったのは、同じく2年の千田和(コ2)。内野手ながら今季は投手としても出場し、その多才ぶりを発揮している。二死二塁、これ以上の失点は許されない緊迫の場面。マウンド上の千田和はファウルで粘られながらも最後は強気の一球で見事見逃し三振を奪い、窮地を断ち切った。

堂々のピッチングを見せる千田和

8回裏、投手陣の奮闘に背中を押された立大打線が反撃の狼煙を上げる。二死一塁の場面、バッターボックスには13打席ヒットから遠ざかっていた橋本(社4)。ファウルで粘り迎えた勝負球を見事ライトに弾き返し、この試合2本目の安打を放つ。続く代打・奥津(文2)が死球で出塁するとベンチからは大きな声援が飛び、立大は二死満塁のチャンスを迎えた。ネクストバッターは先日の慶大戦で4打数4安打の活躍を見せた杉浦(ス2)。しかし相手エースの気迫の投球を前に見逃し三振に倒れ、惜しくも得点には至らなかった。

ヒットでチャンスを広げる橋本

9回表、8回で好投を見せた千田和が引き続きマウンドに立った。先頭打者を遊ゴロに打ち取るも、死球と右安打で一死一二塁のピンチを迎える。ここで重圧からかワイルドピッチが重なり失点。一死三塁となったところでマウンドを市村(済3)に託した。春季リーグでの登板からおよそ半年ぶりに公式戦のマウンドに立つ市村。緊急登板とは思わせない安定感ある投球でチームを救う好リリーフを見せた。

明大打線の火を消す市村

4点ビハインドで迎えた最終回、立大を劇的なシナリオが待っていた。先頭バッターは守備から試合に入った千田寛(コ2)。ボール球を冷静に見極め、甘く入った球をレフトに弾き返す。この試合初めての二塁打が無死二塁のチャンスをつくった。沈黙を続けた立大打線に反撃の火がともる。

二塁上で拳を突き上げる千田寛

続くバッターは秋季リーグここまで全試合でスタメン出場を果たしている城(ス2)。ストライクゾーンの球を果敢にスイングし、ファウルで粘る。最後は空振り三振に倒れたが、勝負を避けず食らいつく姿勢が光った。ネクストバッターサークルからは4番尾上がゆっくりと歩を進める。その気迫で尾上は四球を掴み取り、塁上からベンチを鼓舞した。

打席で存在感を放つ尾上

一死一二塁のチャンスで打席に立つのは、指名打者・松山(観2)。ボール先行の4球目、わずかに甘く入った一球を見逃さずライトへ運び、一死満塁にチャンスを広げる。このチャンスで打順が回ってきたのは1年生ながら先発出場している大牟禮(済1)。打席前のルーティンを終え臨んだ初球にデッドボールを受け、立大は押し出しで1点目を得た。

チャンスでヒットを放つ松山

続く打席には同じく1年の四釜(社1)が立つ。ショートの守備でも味方を救ってきた期待の新星だ。ファウルでタイミングを合わせていく四釜だが、なんとここで2球連続のワイルドピッチ。9回表の明大とまったく同じ得点パターンという偶然に、場内は歓声と驚きに包まれた。四釜は一邪飛に打ち取られ、打席には橋本が入る。8回に放った右安打の記憶も新しく、制球を乱した相手投手は再び暴投。三塁走者がホームを駆け抜け、試合は4―4の振り出しに戻った。橋本はストレートのフォアボールで出塁し、あと1点でサヨナラという場面。しかし、代打・石橋(ス1)の打球は惜しくも三塁手のグラブに収まり、ゲームは延長戦へともつれ込んだ。

9回見事な火消しを見せた市村だったが10回表、4番から始まる明大の攻撃は手強かった。初球からフルスイングの相手打者に対し三者連続ヒットを許し無死満塁、絶体絶命のピンチを迎える。しかし、市村は気持ちで負けていなかった。次の打者を二飛に打ち取り一死満塁。続くバッターからは三球三振を奪い取る。なおも満塁の緊迫した場面、市村は自分の投球を貫き無死満塁の大ピンチを無失点で切り抜けた。

危機をしのぎガッツポーズをとる市村

10回裏、立大は1番から始まる好打順。明大は2番手の小川に継投する。前試合の東大戦でセーブを挙げた小川だったが、この日は投球が定まらない。盗塁数リーグ2位の俊足・杉浦が死球で出塁したことも投手にプレッシャーを与えた。続く千田寛はストレートの四球で駒を進める。無死一二塁のチャンスで打席には城。9回での三振の悔しさを跳ね返すようにレフトへ打球を飛ばし無死満塁。サヨナラの舞台は整った。

ヒットで流れを呼ぶ城

しかし、ここで相手投手もギアを上げた。代打の浅井(済3)は空振り三振に倒れ、続く松山も三邪飛で2アウト。試合の行方は大牟禮のバットに託された。果敢にストライクゾーンを攻め、2球で追い込む投手。だが大牟禮は冷静にボールを見極め、フルカウントまで持ち込む。迎えた7球目、打球は夜の闇を切り裂くようにライトへ。歓声が球場を満たし、立大は劇的なサヨナラ勝ちを手にした。

仲間から祝福を受ける大牟禮

歓喜の輪に迎えられる大牟禮

投手戦から一転、延長戦での劇的な逆転劇で幕を閉じた今試合。スコアボードに0を連ねた田口とその意思を継いだ千田和、市村の魂の投球は、見る者の心を震わせるものだった。そんな投手陣の奮闘に導かれるように、打線もまた闘志を燃やした。相手のミスで追いついた9回裏にも、皆が勝利への執念を宿していた。投手と野手の互いを尊敬し信頼する気持ちが呼んだ奇跡。野球の神様は立大のその絆に白星を授けた。

 (10月7日・川﨑亜湖)

◆コメント◆#3市村選手

―9回、厳しい場面でマウンドを引き継いだときの心境は

絶対自分が0点で抑えて、最後の攻撃に回そうという気持ちで臨みました。

―チームに流れを呼んだ力投を振り返って

無我夢中で投げた結果です。とにかく無心で投げ続けました。

―10回、無死満塁のピンチを背負ったときの心境

正直1点はしょうがないかなと思っていました。でもアウトを重ねるごとに、勝ちへの気持ちが強くなっていって、ここを0点で切り抜ければ仲間が打ってくれると信じて投げました。

#47大牟禮選手

―1年生ながらスタメンとして出場している心境

上級生に交じって試合に出て、すごくいろんな経験をさせてもらっているなと感じています。先輩たちが積極的に下級生に声をかけてくださるので、本当にやりやすい環境でプレーさせてもらっています。

―二死満塁、サヨナラのチャンスで打席が回ってきたときの心境

このリーグ戦では、投手陣の力投を援護できないことが多くて。今日も投手がここまで抑えてくれたので、絶対ここは野手が恩返しをしようという気持ちで打席に入りました。

―最後の打席で意識したこと

満塁だったので、長打というよりは後ろにつなぐ意識をもって打席に入りました。そういう意味では、いつもの自分のスタンスのまま臨めました。

―サヨナラタイムリーを放った感想

今までずっと野球をしてきてサヨナラは打ったことがなかったので、本当にうれしかったです。

―次戦に向けて一言

残りの試合も少ないですが、目の前の一球に全力でプレーしていきたいと思います。

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