第242・243合併号

立教スポーツ242・243合併号

表彰台の頂点に立ち笑顔を浮かべる中島(コ2)

 前途有為のシンデレラボーイ・中島渉が快挙を成し遂げた!創部史上初となる全日本学生RCS年間総合優勝。1カ月という短期間でクラス3からクラス1までスピード昇格を決めた中島だが、その快進撃は止まらなかった。輝かしい功績の裏にあったのは飽くなき努力。高校3年次にマウンテンバイクで世界選手権出場を経験した彼は、ロード転向後もプロチームに所属して修練を積んだ。「継続することが大事」。走り続けたことで圧倒的な存在へと進化を遂げた。

ロードの韋駄天

 自転車競技部の歴史が動いたRⅭS最終戦。あまたのレースで大喝采を浴びた中島が、神宮の表彰台で年間総合優勝の栄冠を手にした。 昨年6月にクラス3としてRⅭS初出場。1年生ながら優勝を飾ると瞬く間にクラス2に昇格した。翌月に開催された大会では連日で王座を獲得し、クラス1昇格と優勝を同時に決める。短い期間で大舞台の最高峰まで上り詰めた立大の新星。その驚異的な実力は、周知のものとなった。 好調な滑り出しが一転したのは11月。練習中の右手首骨折という予期せぬアクシデントで、総合優勝への道が険しくなる。一抹の不安を抱え出場した今年2月の川島クリテリウム。療養中に奪われた暫定首位の座を取り戻すためには、決して負けられない戦いとなった。短いコースをハイスピードで周回する今大会。第一線に復帰したばかりの中島にとっては、苦しい体力勝負が仕掛けられた。それでも、けがの影響を感じさせない走りで利への行路を駆け抜ける。鍛え上げたスタミナを武器に最終局面も先頭をキープ。単騎出場ながら、2位と3秒差で試合を制した。立大のトップランナーは見事RⅭS首位の座を奪還。創部史上初の記録が誕生した瞬間であった。

王座への足跡

 大学と並行しておととしからプロチームに所属する中島。毎週末に筑波へ赴き、ハイレベルな練習に参加している。 中島がマウンテンバイクからロード競技に転向したのは高校3年次。世界を経験した彼にとっての新境地であった。実力差を埋めるため、練習方法を模索する日々。1人で厳しいトレーニングを続けるも結果につながらず、何度も引退を考えた。 苦悩する彼を献身的に支えたのは、同じチームに所属するプロ選手だった。試合を想定した走り方から、肉体改造を目的とした食事管理までベテランの技術を細かく伝授。さらに長時間のレースに耐えられる体力づくりのため、4~5時間もの走行練習に注力した。 大学入学後には同じ熱量で競技に臨む戦友たちとの出会いもあった。精神的に助け合える仲間と切磋琢磨(せっさたくま)できる環境に、モチベーションは高まるばかり。年間優勝を果たし、最も警戒すべき学生ランナーとして名をはせるまでに成長する。苦悩と共に走った道は終着点を迎えた。 「自分には自転車競技しか残らない」と力強いまなざしで前を見据えた中島。現状に満足せず次なる目標はインカレ優勝。何度王座を手にしても、彼は貪欲に頂点を狙う。自転車競技部の新たな歴史を築いた二輪は回り続ける。

 

【水泳部】0.01秒差の激戦制す。日本選手権男子200㍍背泳ぎB決勝、山下が1位 助言を力に潜水勝負で白星

自己記録を更新し、喜びをかみしめる山下(現2)

万里一空

 電光掲示板にタイムが表示されると、山下は大きく拳を突き上げる。「よっしゃあ!」。一年越しの好記録に歓喜し、思わず雄たけびを上げた。 大学入学後、山下は伸び悩んでいた。自己ベストに届かないことが長く続き、初めて出場したインカレは予選敗退。「試合で勝てる未来が見えない」。泳ぎへの自信は薄れ、大きな壁に直面する。そこで同期やコーチに助言を求め、苦手とするキック力強化の指導を受けた。弱点克服を決意し、ハムストリングを中心とした下半身の筋力増強を図る。レースを最後まで戦い抜くため、徹底的に体を鍛え上げた。 自主練習の継続を怠らず、以前よりもキックでの推進力が増す。3月に行われた代表選考会では、わずかながらもベストを更新し、7位入賞。確かな進歩を感じ、明るい兆しが見えた。 「ここで踏ん張れば、いつか報われる」。低迷期からの脱却は、練習をひたむきに取り組んだ努力が実った結果だった。

一意奮闘

 日本最高峰の舞台を前に山下の気合は十分だった。自己ベスト更新を念頭に予選に臨む。結果は初めての1分59秒台。予想以上の記録でB決勝進出を果たし、胸をなで下ろした。 迎えた決勝への挑戦。隣のレーンには五輪メダリストの坂井がいた。しかし、集中は切らさない。前半からペースを上げる選手が多い中でも自分の泳ぎを貫き、プラン通りの展開を見せる。100㍍を5位で折り返すと、後半でピッチを上げて勝負に出た。 体一つ離れていた差を徐々に縮めると、残り50㍍で3位に浮上。高めた推進力を生かして距離を詰め、先頭と並んだ。力強くタッチ板に触れ、結果に目を移す。一番上には山下の文字。2位との差はわずか0.01秒だった。「今日ぐらいは自分を褒めたい」。その言葉には一年間の思いが詰まっていた。 インカレ優勝へ大きく近づいた今大会。好記録に満足することなく、さらに上位を目指す。次世代エースが表彰台に上る日は遠くない。

(大澤創)

【レスリング部】掴み取った栄光!60年ぶりの偉業!東日本学生リーグ1部昇格 ついにこじ開けた長い歴史

加藤(法4=写真右)に駆け寄り健闘をたたえ合う神山(法4=写真左)と佐藤(済4)

 立大レスリング部が実に60年ぶりとなる1部昇格を果たした!圧倒的な強さを見せつけ2部優勝。続く入れ替え戦では接戦の末、慶大に勝利した。彼らはいかにして偉業を成し遂げたのか。その裏には主将・神山の存在があった。

敗戦を糧に

 3-3でついに最終戦を迎えた。勝てば昇格、負ければ残留。張り詰めた空気の中、加藤は静かにマットに上がった。 前回大会の入れ替え戦、当時1年生ながら出場するも結果は惨敗。今回のリーグ戦に懸ける思いは誰よりも強かった。試合前日、同じ重量級の先輩・横田(20年度卒)からアドバイスをもらう。「自分の距離で戦え」。相手と間合いを取りつつ、先手を打つことを意識した。 開始早々試合が動く。低い姿勢から、鋭いタックルで場外に押し出して先制。「いけるぞ」「タックルもう1回!」。仲間の声援を励みに攻めの姿勢を貫き通す。相手の隙を見逃さず、左足を両手でつかみ、一気に押し倒した。さらにファールで有利な体勢からの攻撃。最後は2連続で気迫のこもったローリングを決め、勝ち星を挙げた。 3年前の雪辱を晴らした加藤。昇格を決めた瞬間、思わず部員のもとに駆け寄った。60年ぶりの快挙に涙を流す選手たち。長く閉ざされていた2部の扉をついにこじ開けた。

決意を力に

 「3年生がいないから、下級生と二分するかもしれない」。新体制が発足したのは昨秋。主将に就任した神山(こうやま)は部員間で距離が生まれることを懸念した。つながりの強いチームに。キャプテンとしての責任が彼を突き動かした。 選手は9人のみ。人数の少なさを生かし、学年の壁が無い部を目指した。アップ時にはバレーボールやフリスビーなどを導入。遊び感覚で体を温めながら、部員同士が楽しめる雰囲気を心掛ける。「良い意味で自由奔放」な神山の親しみやすいキャラクターが後輩との距離を縮めるきっかけになった。 次第に練習中に下級生からも意見が飛び交う。実戦形式では、タックルのタイミングなど技術的な部分を指摘できる関係に。部員同士でコミュニケーションを取りながら練習の質を上げていく。限られた人数の中、全員で高め合える環境を作り出した。 仲間と共に培ってきた技術でつかんだ歴史的偉業。悲願達成の瞬間は選手の心に刻まれた。

(松尾悠)

笑顔を見せる選手たち

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