
257・258合併号
立教スポーツ257・258号
2025年7月6日更新
【野球部】百年の系譜に花を添えるスラッガー 覚醒の強打者が59年の壁を破る 山形球道 球けがれなく道けわし 飛躍 東京六大学野球春季リーグ戦 三冠王 「チームを引っ張る責任感が自分を変えた」

トロフィーを手に笑顔を見せる見せる山形(コ4)
山形が東京六大学100周年の節目で三冠王に輝いた! 立大からは59年ぶり、史上2人目の快挙となる。打率・本塁打・打点で1位になることで得られる三冠王の称号。3部門だけでなく、打撃7部門においても首位を独占した。今季は開幕戦からスタメン入り。1番打者として打線を引っ張り、チームの勝利に大きく貢献した。法大戦では満塁本塁打を放つなど勝負強さも兼ね備える。MVPにも選出され、誰もが認める最強打者へと成長を遂げた。数々のタイトルを獲得し、より飛躍をみせた春季リーグ。悲願の優勝を目指す最後の秋、山形の活躍から目が離せない!
この春の主役
今年で100周年を迎えた東京六大学野球。節目の年に、立大から三冠王が誕生した。 首位打者を目指して挑んだ今季。ひたすらバットを振り続けた日々が目標を超える結果につながった。歴代の三冠王は打線の中軸を担う強打者たち。長打力や勝負強さが求められてきた。山形は全試合に1番打者として出場。出塁でチームの得点機会を作る役割にとどまらず、チャンスでの一打や豪快なアーチで得点に貢献した。どんな場面でもバットで魅せ、これまでにない1番打者像を確立。三冠を争ったライバルたちよりも多く打席に立ちながら、安定して結果を出し続けた。 「六大学一の投手に対して自分のスイングができた」。 今季3連覇を果たした強敵・早大との3回戦。エースの伊藤(4年=仙台育英)から豪快な本塁打を放った。この日は4安打5打点の大活躍で存在感を示す。勢いづいたチームは⒓回までもつれる激戦をサヨナラで制した。 圧倒的な成績で100年の歴史に名を刻んだ唯一無二のスラッガー。この春、名実ともに六大学屈指の打者となった。
主砲の足跡
立大野球部だった父の背中を追い、進学した山形。2年生でリーグ戦に初出場し順調なスタートをきるも昨年までは規定打席に届かず悔しさを覚える。今季、大きな飛躍を遂げた背景には、自身の打撃と本気で向き合った日々があった。 上級生の引退を機に責任感が芽生え、チームをけん引する決意を固める。練習量を大幅に増やし仲間とバットを振り続けた。理想のスイングを確立するため毎日ボールを投げ続けてくれた学生コーチの存在も大きい。二人三脚で練習を積み世代屈指の強打者へ成長を遂げた。 重ねた努力は確かな自信に変わる。「チャンスの場面を楽しむ」。 この言葉通り今季は幾度となく好機で快音を響かせた。三冠にとどまらず多くの打撃項目で首位に躍り出る。仲間との練習が実を結び、喜びに溢れた。 「自分のバッティングをすれば打てない投手はいない」。 自信と実力を兼ね備えた最強打者が最後の秋にかける思いは強い。目標は再び首位打者になること、そして悲願のリーグ戦優勝だ。努力の積み重ねが花開いた春。三冠王は序章に過ぎない。さらなる飛躍を目指し、勝利へ導く打球を放ち続ける。 (木屋沙織)

広角に打ち分ける山形
【水泳部】最高峰の場で躍動!懸命につかんだ金 新戦力が台頭!止まらぬ快進撃 松永 混合400メートルフリーリレー パラ水泳世界大会 「1番になれて良かった」

メダルを手にする松永(ス1)
立大水泳部からパラ水泳ワールドシリーズの代表選手が輩出された。静岡県富士市で行われた日本初開催の本大会。松永は混合4×100㍍リレーの第三泳者として出場した。力強い泳ぎでチームの優勝に貢献。メンバーと心を一つにバトンをつなぎ、世界の強豪選手が集う場で快挙を成し遂げた。偉業の裏側にあったのは、常に自己ベスト更新を追求する向上心。「自分はまだ実力が足りない」。 現状に満足せず、次の目標に世界最高峰・パラリンピックを掲げた。夢に向かい、松永の野心はとどまることを知らない。
手にした頂点
パラ水泳の最高峰・ワールドシリ―ズで立大水泳部に期待の新星が誕生した。 初日の個人種目では自身が望むタイムに届かず悔しい結果で終わる。雪辱を果たすべく、強い決意を秘めてフリーリレーに挑んだ。迎えた決勝、会場には多くの観客が集まり緊張感に包まれる。開始の合図と共に第1泳者がスタート。序盤から大きなリードを奪うと、続く第2泳者もさらに差を広げた。 1分以上のリードでバトンを受けとり、勢いよく飛び込んだ松永。前半は泳ぎのテンポをあげ好調な滑り出しに成功する。積極的に速度を上げるレースを展開した。終盤にさしかかるとリレー前の個人種目が響き、徐々に疲労が表れる。体が重くなっていく中、勝利への信念で粘り強く泳いだ。残り25㍍、最後の力を振り絞り、自慢の推進力を発揮。ラストスパートをかけ十分なリードを保ち最終泳者につなぐ。日本代表は一度もトップを譲らず金メダルに輝いた。 「まだまだ上を目指す」。 国際大会で快挙を成し遂げたものの、現状に満足はしていない。来年に開催されるアジア大会でのメダル獲得を次の目標に掲げた。今回で課題となった持久力と後半の泳ぎを強化するべく練習を開始。進化を求めて、再び挑戦が始まった。
強さの原点
友人からの誘いをきっかけに小学1年生から水泳を始めた松永。6年生には本格的に試合に出場し始め、選手としてのキャリアを積んでいく。 競技人生の分岐点となったのは高校時代。「もっと上を目指したい」。 強い思いから名門である花咲徳栄高校への進学を決意する。ハンディキャップを抱えながらも過酷な練習を通して自身を追い込む。生まれつき左足が短く義足で生活する松永は身体能力に合わせた泳ぎを模索した。陸上で鍛えた体幹を生かして、強く水をかきながら安定した泳法を確立していく。中でも高校2年時のアジアパラの代表選考は、大きく成長した経験になった。厳しい選考記録と限られた出場枠で、感じたことのない重圧が襲いかかる。自己ベストを狙い続けることを念頭に全力を出し切ることに集中。強気な姿勢が実を結び、念願の代表権を獲得した。その後、日の丸を背負った大舞台でメダルを勝ち取り実力を見せつける。いかなる状況でも、臆せずに発揮できる勝負強さを形成した。 「自分が結果を残すことで、より多くの方にパラ種目を知ってもらいたい」。 本気で競技に打ち込むからこそ伝わる決意と覚悟。世界に挑み続ける彼女の姿は、多くの人たちに大きな勇気を届ける。 (今田誠吾)

力強い泳ぎを見せる様子