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立教スポーツ252・253合併号

2024年7月5日更新

【サッカー部男子】 闘志を抱き、プロへと羽ばたく! 挫折を越え立大史に名を刻む 小林 ロアッソ熊本内定 「粘り強さを活かして結果にこだわりたい」

入団会見で満面の笑みを浮かべ、ガッツポーズを見せる小林

 

小林慶太が悲願のプロ入りを果たす! 昨年の久保庭良太選手に続き、立大から2年連続でJリーガーが誕生した。小林の持ち味は球際の強さ。磨き上げた武器でチームを救う場面も多い。さらに、周囲を引っ張る統率力も兼ね備え勝利に貢献してきた。成長を続ける熱き男の挑戦が熊本の地で新たに幕を開ける。

悔しさをバネに

一度は諦めたプロサッカー選手の夢。試合での悔しさがさらなる成長を後押しし、J2クラブへの入団内定を果たした。 6歳から始まった競技人生。中学からFC東京むさしに加入すると、頭角を現しユースに昇格する。しかし急激に上がった周囲のレベルに順応できず、プロへの道を諦め立大に進学した。一年次は、スタメンで試合に出続けられる環境に甘えていた。気持ちを引き締められず、受動的にプレーをする日々。そんな中、2部リーグ残留をかけた城西大戦を迎えた。小林は先発で試合に出場するも、実力を出し切れず途中交代。決勝点を奪われる瞬間をベンチから見つめることしかできなかった。「あれ以上の虚無感はない」。チームに貢献できなかった不甲斐なさを痛感。消極的なプレーとは決別し、成長することを誓った。 降格後は気持ちを切り替え、技術の強化に励んだ。自らがチームを勝利に導くため、自主練では守備だけでなく攻撃も意識。素早いドリブルとシュートの正確性を磨き、小林は攻守にわたって幅広く活躍するMFへと成長を遂げた。「自分が絶対的な存在にならなければいけない」。リーグ戦ではチームを先導する意識を持ち、球際の強さで活躍を見せる。着実な努力が実を結び、2部復帰につながった。

新たな世界へ

 献身的なプレーでチームの要となり、昇格に貢献した小林。自信を取り戻し、プロへの道を再び志すようになった。しかし、翌年立大は再び都リーグ降格の危機に陥る。小林は緊張した面持ちで2部残留がかかった日体大戦に臨んだ。序盤から拮抗した展開で前半を終え、同点で試合は折り返す。後半6分小林は相手布陣の隙を見逃さなかった。コート中央でスルーパスを受け、素早いドリブルを駆使し瞬く間にゴール前へ抜け出す。GKと一対一の局面でも相手の動きを冷静に予測。放ったシュートはネットを揺らし、勝ち越し点をあげた。その後も球際の強さを活かし相手攻撃陣をゴールに寄せ付けない。最後まで得点を許すことはなかった。試合終了のホイッスルが響き、2部残留が確定。ホームは大歓声に包まれる。磨き上げた技術で勝利をもたらせたことの達成感を噛みしめた。自らの進歩を実感した一戦から2か月、ロアッソ熊本からオファーが届いた。試用練習では堅守に加え得点力のあるボランチとして評価される。一度は諦めた念願のプロ入りが決定した。「自分の価値を高めてJ1昇格に貢献したい」。さらなる高みを目指し、闘志を燃やす。赤のユニフォームを身にまとい新たなピッチで翔ける日はそう遠くない。

(別所ゆかり)

クロスボールをあげる様子【撮影・渡邊公美子】

【フェンシング部】前人未踏の功業を成し遂げる! 信頼感でつないだ全員の思い 三種目同時一部昇格 「やってきたことを信じた」

声を上げる石井(済4)

3種目全てで2部リーグを勝ち抜き入替戦へと進んだフェンシング部。選手の背中を押したのは、種目の垣根を越えた力強い声援。激励を力に変え熾烈な争いを制す。史上初の全種目同時昇格を果たした。混戦ながらも昇格を決めたエペ団体。快挙の裏には、彼らのひたむきな努力があった。

仲間と共に

 接戦の2部リーグを全勝し、入替戦へと駒を進めたエペ団体。試合までの短い期間でコーチと共にビデオ分析を行い、日大の弱点を探る。攻撃までの動きが大きい相手に対し、動作の隙を突く作戦を練った。迎えた試合当日。他種目は既に勝利を収め全種目同時昇格が懸かる。部員が固唾を飲んで見守る中、エペチームがピストに立った。45点先取で戦う今大会。1戦目で他種目を専門とする橋本が助っ人として出場し、エース対決を制す。立大の応援団が湧き、選手たちを勢いづけた。その後も順調にリードを広げ、40―35で最終戦を託されたのは主将・角坂。次々に得点を奪最後は失点に焦る相手が大きく攻めに出たところをすかさず突く。作戦が功を奏し、日大にとどめを刺した。ランプが光り、試合終了と同時に1部昇格が決まる。3年間届かなかった目標を達成し普段は冷静な主将も歓喜の表情を浮かべた。

想いを胸に

 昇格確実と言われた他種目に対し、昨年2部3位に沈みプレッシャーも大きかったエペ。快挙の裏には並々ならぬ努力があった。 「リーグ戦はチームで戦う特別な大会」。 個人戦が多い競技であるが故に、今大会に懸ける思いは強い。念願の1部に向かって、4年生を中心にチームの強化に励んだ。キャリアのあるルーキーに対し、大学から競技を始めた選手も在籍するエペチーム。実力差は大きいが、全員で技術を磨く。学年関係なく意見を交わすことで部内一結束力が強い集団へと成長した。さらに、1部に所属する大学と練習試合を行い経験を積む。格上と戦う中で有利な間の取り方を習得した。技術の向上を実感し自信をつけて臨んだ入替戦。鍛錬の成果を存分に発揮し、14年ぶりに1部の舞台へ返り咲いた。今後の目標は、インカレでのエペ団体3位入賞。来年の1部リーグでは王座を狙う。実力のある後輩たちに何を残せるか。主将・角坂を中心に、難攻不落のチーム作りが始まった。 

(佐々木海緒)

攻撃を仕掛ける野村(法3)

 

抱き合う選手たち【撮影・鈴木麻里奈】

相撲部】立教初の女子部員、国内制し海を越える! 大一番で本領発揮! 全日本相撲V

力強く取り組む石井

 立大相撲部に現れた新星が創部史上初の快挙達成! 激戦を勝ち抜き、世界選手権日本代表に選出された。数々の輝かしい成績を残してきた中学・高校時代。重圧に打ち勝ち、今なお進化を続ける。世界を舞台とする今後の活躍に目が離せない! 

修練の結集

 日本代表の座をかけて争われた今大会。無敗で優勝を決め強敵相手に確かな実力を示した。昨年はシニアの部で敗退し、世界選手権の出場を逃す。「絶対優勝しなければならない」。のしかかる重圧に気が張り詰めていた。試合に向けては集中的な基礎連を行う。武器である押しの強化に加え、課題だった土俵際の動きを繰り返し対策。普段よりも強度の高い稽古で万全な状態に仕上げた。当日は順調に白星を挙げ、最終戦へ。対峙するのは最も警戒していた難敵。勝てば優勝が決まる一戦に、緊張が高まる。迎えた立ち合い。1歩目の出方を意識するが得意の展開に持ち込めず、土俵際まで追い込まれる。それでも相手の攻めに耐え、冷静に叩き込んで勝利。全日本王者に輝いた。「去年の屈辱を果たせて嬉しい」。世界への切符を手にし、プレッシャーから解き放たれた石井。賞状を受け取り穏やかな笑みを浮かべた。

たゆまぬ進捗

 小学2年から本格的に相撲を始めた石井。中学時代にはシニアの部日本代表を経験するなど華々しい来歴を持つ。順風満帆な競技人生だったが、高校3年次に進退への迷いから不調に。成績が振るわず、心を塞いでいた。転機となったのは、立大に入学して初めて挑んだ国際大会。「高校時代とは違う、新しい自分に」。大学での再出発を決意し、気持ちを切り替えて土俵へ向かった。取組では相手を次々と倒し、白星を飾る。数年ぶりの優勝を決めた。通算6度目となる日本代表入りを果たした今戦。未経験のシニア世界優勝を目指し、努力を重ねる。普段の稽古では重量のある選手に胸を借り強みの押しを磨く。一方得意の押し相撲だけでは、屈強な海外選手に通用しなことを実感。下半身強化を目指し、ウェイトトレーニングにも力を注いだ。「全てのタイトルを制覇したい」。自身初となる世界の頂点へ。重圧を力に変え、鍛錬を積む。 

(佐京花音)

笑顔で賞状を持つ様子【撮影・鈴木麻里奈】

 

スケート部スピード部門】氷上でみせた圧巻の滑り 支えを励みに力を出し切る 野明 金

 

表彰台に立つ野明

世界の大舞台で快挙を成し遂げた野明。心の支えとなったのは周りからの温かい声援だった。特に緊張を和らげたのは寝食をともにした仲間の存在。2年前の遠征で出会い今大会でも同じく派遣選手に選ばれた。親しい先輩からの声掛けで士気を高める。戦友の支えが野明の原動力となった。「観客皆に応援される選手でありたい」。そう語る野明は声援を一身に浴び、氷上を駆け抜けた。

渾身の滑走

ラスト1周で逆転を許し、優勝を逃した世界ジュニア。前大会の悔しさを胸に、臨んだ大学最高峰の舞台で真価を発揮した。静寂に包まれたリンクで、頂点 に向け力強くスタートを切る。氷の状態が悪く1周目のラップは大幅に遅れたが、動揺せずいつも通りの滑りを意識。中盤から一気に加速しトップに躍り出た。差を縮められる場面もあったが、先頭は譲らない。残り400㍍でラストスパートをかけ滑走を終えた。最終組が終わり表示された順位は1 位。見事に表彰台の頂上へ登り詰めた。 世界ジュニアでの雪辱を果たした野明。「優勝出来てとても嬉しい」。 学生王者となった彼女の顔には、満面の笑みが輝いていた。

感謝を体現

前回大会準V、続く今大会では優勝を果たすなど、順調にステップアップを遂げている野明。さらなる高みも目指す彼女だが、華々しい活躍の裏側には様々な人の支えがあった。 昨年まではスピード部門唯一の部員だった 野明。練習場も自ら確保し、1人でトレーニングを積んできた。一見孤独な環境でも監督や両親のサポートを糧に努力を重ねる。試合前にもらう応援の言葉に幾度も背中を押された。「支えてくれた人に恩返しをしたい」。結果だけでなく、全力で競技に向き合う。自分の滑りで感謝を表現すると決意した。 一層の飛躍に向け、 課題は後半の失速。インターバルトレーニングでは脈を上げた状態で自身を追い込む。終盤に強い選手を目指し 体力強化を図る日々。 ゴールを最速で通過するイメージを持ちながら鍛錬に励んでいる。来季から戦いの場をシニアへと移す野明。「日本のトップと戦えるようになりたい」。彼女が氷上に刻む軌跡はこれからも続いていく。  

(尾暮克心)

リンクを走り抜ける様子【提供・スケート部スピード部門】

水泳部】激闘を乗り越えさらなる進化へ 覚悟を決めた立大の要 山下 パリオリンピック代表選考会4位

決勝の舞台で力泳する山下

 

開花の契機

五輪出場権の獲得へ。強者が集う中、一発勝負の代表選考会に臨む。安定した泳ぎで予選を突破すると、大一番に向けて照準を定めた。 決勝の開始予定時刻は20時30分。頻繁に栄養補給を行い普段の試合より遅い時間帯のレースへ調子を整える。体のリズムが合わず、いつも通りに泳げるか心配しながらも丁寧に準備を重ねた。 迎えた本番。大歓声に包まれながら勢いよくスタートする。苦手な序盤は周りと離されずに食らいついた。しかし競技前の不安が的中し、普段と同じ感覚でスピードに乗れない。7位のまま最後の50㍍へ折り返した。それでも力を振り絞り、先頭集団に追い迫る。白熱した終盤戦を展開したが結果は惜しくも4位。目標のパリ五輪に届かず悔しさをにじませた。

主将の覚悟

選考会の心残りを胸に再起を誓う。次の目標に向け一層練習に熱が入った。 今まで以上の速さを求めフォームの改善に着手。小指からの入水を意識し、最短距離で水をつかむ。腕の回転率が上昇し、以前よりも大きな推進力を得た。さらに体へ動作を染み込ませるため、陸上での鍛錬を重ねる。不安定なバランスボールの上でストロークを確認。体幹を鍛えながら動作を定めた。実践の場として参加した法明立戦では100㍍背泳ぎに出場。55秒台の好記録を出し、成果を実感した。 努力は全て「インカレ優勝」のため。大学ラストイヤーの今年、優勝への思いは誰よりも強い。「支えてくれた人たちに金メダルをかける」。 何よりも恩返しの気持ちは進化を続ける原動力に。悲願成就はもう目の前にある。  

(林梨紗子)

互いに結果を称え合う様子【撮影・佐京花音】