石川巧教授×川崎賢子教授対談全文

ーーーお2人の、立大生へのおすすめ乱歩作品は?

石川先生)
あの、僕から話していいですか?
たまたまこの間論文書いてたばっかりなんで、もうすぐ活字になるんですけども、乱歩作品に『芋虫』と言う作品がありますよね。あの作品の消失版の、『悪夢』と言うタイトルで発表されるんですけども、あれが僕は本当にすばらしいと思ってまして、乱歩自身の預かり知らぬところで森下雨村って言う編集長などが中心になって伏せ字をいっぱい入れるんですね。14カ所ぐらい入れるのかな。伏せ字を入れるんですけども、その伏せ字そのものも実はその作品の魅力を増す要素になっているといいますか、伏せ字だらけの『悪夢』と言う作品が僕は本当に良い作品じゃないかと実は思っているんですよね。それを学生さんに読んでもらってもらいたい。1つはやっぱり検閲と言う問題に対して作家と編集者たちがどういう風に向き合ったのかっていうことがよくわかりますし、それからやっぱり今も日と言う作品はあの戦争で傷ついた身体。その傷病兵の話ですので、そういう戦争と文学って問題を考える機会になると思うんです。またあの作品は「もののあはれ」だという風に言ってまして、最後に主人公が這って井戸に落ちて、自分の命を自分で処するんですよね。あの終わり方は、僕はやっぱりとても強く惹きつけられるものがあるんですよ。この間別のエッセイで、『ゼロになりたい』っていうの書いたばかりなんですけど、消えてなくなりたいんですよ。消えてなくなるって言うことをあの作品を最後に見せてくれている作品だと思っていまして、僕にとっては大事な作品ですね。

川崎先生)
私は先ほど名前を挙げた『孤島の鬼』というのが、完成度が高いかというとそうでもないんですけど、例えば完成度で言ったら『押絵と旅する男』といったような非常に優れた作品もあるんですけど。『孤島の鬼』まだ1度も(論文やエッセイに)書いたことがないので、是非いつか論文かエッセイにしてみたいなって思います。矛盾もいっぱいあるんですけども、乱歩でなければ書けない、変に合理化してないところがいいっていうか、そういう大きな作品だと思ってます。

ーーーお二人が担当されている授業についてPRお願いします

石川先生)
僕は先ほど申し上げました、春学期に「表象文化」と言う授業を全カリでしてまして。そこで乱歩の話をしたので。今年度は終わってしまいました。来年何かまた考えたいと思っているんですけども。

川崎先生)
去年は文学講義で乱歩をやったんですけど、今年はやらなくて。後期は文学と映画って言う形で古典、特に日本映画の中の能楽とか歌舞伎とか文楽とかそういうのを織り交ぜながら、と言うのを文学講義でやります。それから文学の演習は、現代文学を読みましょうって言うので村上春樹、川上弘美、多和田葉子かな、をやります。動画サブスクリプションサービスのおかげでやリモートでしたけどほとんどの人たちが映画の授業を取れたんですけども笑。
ただ乱歩も言ってるように、映画で1番怖いのは大写しだって言ってるんですよね。やっぱりクローズアップですよね、「大きいっていうのが何かなんだ」って言うこと言ってるんです。だから本当は、スマホで見るとかタブレットで見るとかではなくて、大きいスクリーンで映画を見ていただけると良いんですけどもね。そういう導きになるのかなと思っています。小論文では、乱歩やりたいという学生が毎年必ずいますね。

石川先生)
古い立教スポーツが今図書館のデータで見れますよね、あれほんとに貴重なんですよ。立教スポーツって歴史が長いので、デジタル版をぜひ皆さんに見ていただけるように広報活動してほしいです。立教スポーツの歴史みたいな特集を組んで、今デジタル版で見られますよって言うことをぜひ広報していただきたいですね。
ほんとに隅から隅まで読みますよ、僕。時々誤植とか見つけるとすごく嬉しくなります笑

以上が対談の全貌になります。
約1時間にわたり、資料を交えながら対談して頂きました。
ご協力を賜りました石川教授と川崎教授に厚く御礼申し上げます。

(9月30日 取材・編集「立教スポーツ」編集部)

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