第232〜5号合併号

立教スポーツ第232〜5号合併号

12月3日更新

【野球部】オリックスも恋した驚異のアンダースローで念願叶い嬉し涙「球界を代表する選手になりたい」

【野球部】オリックスからドラフト4位指名を受け、笑顔で自身の武器であるサブマリンのポーズを取る中川(コ4)

アンダースローでつかんだ!2020年プロ野球ドラフト会議において中川颯(コ4)がオリックス・バファローズから4位指名を受けた。立大からのプロ輩出は3年ぶり。プライドを貫き、たゆまぬ努力で磨いた投球を武器に1年次から活躍すると最終学年ではエースにまで上り詰めた。その活躍の裏には、両親の存在と、苦しい日々があった――。

【野球部】切り込み写真は明治神宮球場のマウンドに立ち、力投を見せる中川(コ4)

父と掴んだ栄光

父と目指したプロの世界へ。直前の秋季リーグ戦開幕当初は本来の力を発揮できず、不安が募る日々を過ごしていた。
迎えたドラフト会議当日。ライバル選手たちが次々と指名されていくにつれ緊張が走る。しかし歓喜の瞬間は突如訪れた。オリックス・バファローズの4巡目。ついにその名が呼ばれた。「指名していただきほっとしました」。 張り詰めていた緊張の糸が切れ目が潤む。指名後真っ先に連絡したのは地元・神奈川で吉報を待っていた両親だ。「父の電話越しの涙に自分もつられてしまった」。 父と過ごした日々を思い出しこらえていた涙がこぼれ落ちた。
野球との出会いは、小学1年生の時。元甲子園球児である父に、幼い頃から野球のいろはをたたき込まれた。初めはオーバースローだったがフォームに難があり断念。それでも投手へのこだわりが強く、諦めきれない。「野球選手として勝負するならアンダースローしかない」という父の勧めもあり、本格的に取り組んだ。柔軟性を求めて、小学6年生からフィットネスジムに通う毎日を過ごした。最大の武器は、父と二人三脚で磨き上げたものだった。

栄光の裏の苦悩

1年春に法大との開幕カード初戦で鮮烈なデビューを飾ると、その後も守護神として大奮闘。18年ぶりのリーグ優勝に貢献した。続く全日本野球選手権でも最優秀投手賞の活躍を見せ、チームを日本一に導いた。ところが、華々しいデビューの後に待っていたのは、苦悩の日々だった。中川の活躍に対し、他大学のサブマリンへの研究は進む。2年春には、防御率自己ワーストの6点台。結果を求めるあまり、自分のフォームを見失うこともあった。
長い足踏みが続く中、入学時に持っていたマウンド度胸を思い出す。当時溝口監督(91年度卒)から「強心臓」と呼ばれた精神力。初心に立ち返り、弱気な自分を見直す。3年秋はデビュー以来の防御率2点台をマーク。ピンチでも物おじしない強気な投球を見せ調子を取り戻した。
来るラストシーズン。エース番号「18」を背負いマウンドに上がる。本調子ではなかったものの、最終戦では3回無失点の好投。最終回には笑顔も見られた。持ち前の強心臓で最後までエースの仕事を全うし、勝利で四年間の縦じま生活に幕を下ろした。
幼少期から思い焦がれた最高峰の舞台に立つ準備はできた。「アンダースローといえば中川と言われる存在に」。 そう語った彼の目には希望が満ちあふれていた。両親の思いを胸に磨き上げたサブマリンは、プロの世界で舞い上がる。(冨田璃央)

【準硬式野球部】立大旋風!準硬しか勝たん!全員野球で競り勝った!準硬六大学秋15年ぶり優勝

【準硬式野球部】優勝を決め、喜びを爆発させる選手たち

春季リーグが中止になり、今年唯一のリーグ戦となった秋。未曾有の状況下で大会規則の変更を余儀なくされた。試合数が例年の半分になり、一つでも負ければ命取り。全国レベルの大学がそろう中、立大が15年ぶりに秋の東京六大学を制した。

総力戦

優勝が決まった瞬間、ベンチから選手が勢いよく飛び出した。マウンドにいた泰道は両手でガッツポーズ。柏瀬は涙を浮かべた。
チームの根幹はどんなに劣勢の展開でも諦めない粘り強さ。そして、部員全員が同じ方向を見ている団結力の強さだ。圧巻だったのは慶大戦。2点差を追う展開で最終回を迎えるも、最後までベンチから絶えず声援を送り続けた。走者が1人出ると盛り上がりは増し、市野の一打で逆転に成功。法大戦では延長12回の攻防を制し、同率1位で迎えた早大戦も終盤に逆転して優勝を決めた。立大らしい全員野球は相手チームにとって脅威そのものだった。
「やっとプレッシャーから解放される」。 優勝が決まった試合後、チームの指揮官である加納学生コーチ(コ3)は安堵(あんど)した。加納は全員野球において重要な選手起用の判断を任された。必ずしも交代した選手が活躍できるとは限らない。責任は重大だった。「ベンチの選手全員で戦っている感じ」。 加納の右腕・佐藤学生コーチ(文2)は振り返る。文字通りチーム全員でつかみ取った優勝だった。

【準硬式野球部】安打を放つ今川(理4)

刻まれた1年

「後輩が泣きながら喜んでくれたのが一つの成果」。 主将・柏瀬は、優勝後のインタビューで嬉しそうに語った。昨年10月、スローガンである「一生忘れない1年」を目指し、チームづくりを始めた。全員が優勝を心から喜べるチームにしたい。4年生の共通の思いを込めた。
スローガンを体現するために柏瀬が取り組んだのは、部員全員がコミュニケーションを取りやすい環境づくりだ。練習前のアップでは毎回違う班を設け、学年を超えた交流の機会を増やした。全員の意見を共有するためにミーティングの頻度も増加。先輩後輩の壁もなくなった。誰でも意見できる環境。主将として理想の組織をつくり上げた。
しかし、全てが順風満帆に進んだわけではない。4月、練習禁止でチームの士気は下がっていた。「先輩たちの代で優勝したい」。 加納の一言で柏瀬は奮い立ち、部全体をひとつにまとめ直した。「強いチームになった」と柏瀬は満足げな表情を浮かべた。
全員野球を武器に戦い抜いた最初で最後のリーグ戦。勝ち取った優勝は「一生忘れない1年」として選手の心に確かに刻まれた。(渡部広大)

【準硬式野球部】適時打を打った市野(理3)

【準硬式野球部】投球する泰道(文4)

【準硬式野球部】ホームスライディングする柏瀬(コ4)

 

【モーターボート・水上スキー部】番狂わせの男女日本一慶大を超えて絶対王者再び‼️心に秘めた勝ち歌、来年へ

【モーターボート・水上スキー部】優勝につながる大ジャンプを決める鈴木達(法4)【撮影・藤部千花】

昨年より2ヶ月遅れで開催された今大会。場所も気温も違う中、25年ぶりのアベック2連覇を達成した! ライバル慶大に勝つ想定ができず、期待や不安と戦う日々。日本一の裏には優勝へのこだわりと部員同士の思いやりがあった。

【モーターボート・水上スキー部】連覇が決まり笑顔を見せる選手たち

頂から見た景色

励みとなる応援もなく、静かにインカレが幕を開けた。「男子は正直厳しい」 「女子は勝てる」。前評判は選手たちを追い詰めていた 。
日照時間の影響で例年とは違う種目の順番に加え、出走順の変更が相次いだ。困惑する選手たちをよそに競技は淡々と進んでいく。
今年はトリックとスラロームでの後れを、最終種目のジャンプで巻き返す戦法だった。 だが、最初のトリックで男子は神田が、女子は宮田が1位に。続く女子スラロームでは五十嵐が安定の滑りを見せた。「弱小スラチーム」と言われていた男子は3年生が大健闘。2日目を終え、総合順位は予想外の男女1位だった。
戦法は良い意味で裏切られた。それでも慶大とのわずかな差に油断はできない。雨風が吹き荒れる3日目。大熊の飛んだ44.3㍍の大ジャンプが優勝を決定づけた。昨年度も経験したアベック優勝。だが、期待とプレッシャーの先に見た日本一の景色は、苦しんだ分だけ感動と涙であふれていた。

【モーターボート・水上スキー部】歓声を上げ、ガッツポーズする大坪(19年度卒)

限界のその先

決して孤独ではなかった。リモート配信のチャット欄はOB・OGの応援で埋め尽くされ、学年や世代を超えたつながりの強さを見せた。
中でも今年の3、4年生はどの代よりも仲が良い。家族のように過ごしてきた3年生は、新人戦で大敗を喫し涙をのんだ。それから1年が経った今大会。「3年生がいたから優勝できた」と宮田がたたえるほどの急成長を遂げ、日本一を目指すには欠かせない存在になっていた。
一方で後輩は「日本一にしてあげたい」と強い気持ちを胸に試合に臨んでいた。頼ってばかりではいられない。感謝と恩返しを込めた滑りは4年生を頂へと連れていった。
部を引っ張ったのは多くを語らず背中で見せる主将・鈴木達。「勝利のために日々自信の持てる行動をとる」と、ストイックに部員と向き合った。口下手な鈴木達が、新主将・原に託したのは「3年連続のアベック優勝」だけだ。
歴史的快挙への挑戦はすでに始まっている。今年以上に男女優勝への道のりは長い。それでも、4年生が慶大相手に見せた逆転劇は後輩を奮い立たせている。原が目指すのはアベック2連覇のその先。限界を超え史上初の偉業を成し遂げる瞬間は、夢物語では終わらせない。(藤澤舞衣)

【モーターボート・水上スキー部】抱擁を交わす大熊(済4)

【モーターボート・水上スキー部】華麗な技を決める神田(文4)

【モーターボート・水上スキー部】水しぶきをあげ進む五十嵐(済4)

【モーターボート・水上スキー部】試合後、安心した表情を見せる女子部員たち

【ボート部】男子舵手なしフォアが全日本大学選手権大会で金!4人で王者の意地を見せ、ラストレースで悲願の優勝!

レース後、ガッツポーズし歓喜の声を上げる選手たち【提供・日本ボート協会】

これぞ有終の美! 男子舵手なしフォアが、同種目では5年ぶりのインカレ制覇を成し遂げた。クルーは全員が4年生で今大会をもって引退となる。必勝の信念と共に臨んだラストレース。引退の花道を見事に快挙で飾った。

のしかかる課題

4人の雄たけびが静寂を切り裂いた。大学最後のレースで初めてつかんだインカレ優勝。彼らを頂点へ導いたのは、どんな状況でも自分たちが勝つという信念だった。
頂点への船出は順調ではなかった。「本当にムラがある」。9月末、舟の最後尾に座る松藤が語ったクルーの印象である。狙うはスタートダッシュからの先行逃げ切り。そして学生生活最後に1位を取って終わることだ。目標を達成するため、ムラは確実に無くす必要があった。ミーティングではオールの合わせ方から舟の動きを追求。練習ではスタートを意識し、最初から力を出し切るイメージで取り組んだ。
迎えた全日本選手権。今シーズンの初陣となった一戦で、強豪ぞろいの社会人相手に粘りを見せるも、前に出られないまま3位に終わった。「悔しかった」。4人は言葉をそろえた。課題はスタートのムラ。先行逃げ切りを目指すクルーに重くのしかかっていた。

「絶対いける!」

全日本3位は学生では最高成績。続くインカレは優勝候補として臨む。だが舟のエンジンを担う若濵は気を引き締めた。「どうなるか分からない。有終の美を飾れる人はあまりいないから」。
インカレが幕を開けた。予選では課題だったスタートのムラもなく独走。準決勝も好スタートを決めて逃げ切り体制を固めた。途中でミスが出るも、すぐに立ち直って1位。決勝へ駒を進める。
決勝前夜、経験豊富な山口恭が提案する。「相手に出られたら、終盤に入ってすぐスパート」。今大会は一度もリードは許していなかったが、決勝は何が起こるか分からない。そのための策だった。
予感は的中した。大事な決勝のスタートでまさかのミス。序盤に大きくつまずき、中盤で首位の慶大に1艇身ものリードを許した。だが、主将を務める橋本の叫びで乱れたクルーは落ち着きを取り戻す。「絶対いける!」。中盤過ぎからのスパートで一気に慶大を追い抜き、勢いそのままにゴール。劣勢からの鮮やかな逆転劇で5年ぶりの栄冠をつかんだ。
「優勝は頑張って達成したかった」。大会を橋本は振り返る。逆転へ導く一言を生んだのは揺るぎない勝利への信念。4人は花道を飾った金メダルを手にし「悔いはない」と艇庫を去った。(濱渡晏月)

【陸上競技部】道下が日本選手権女子1500㍍で9位!初出場で力走見せた!自身も驚きの全国決勝

【陸上競技部】ゴールする道下(社1)

全国から実力者たちが集結する日本選手権。大舞台で道下(社1)が初出場ながら決勝進出&9位に輝いた! 日本選手権同種目の決勝進出は2015年以来5年ぶり。1年生ながら立大の歴史に名を残した!

【陸上競技部】笑顔の道下

結果は予想以上

すい星のごとく現れたルーキーが初出場の日本選手権で実力を証明した。「決勝に残れると思ってなかった」と予想以上の結果に笑みを浮かべた。日本最高峰の舞台で自己ベストに0・09秒迫る快走を見せた。

初日の予選、日本記録保持者の田中が序盤から先頭を走ったが想定内だった。強みのスピードを生かしてラストスパート。出場者の中で自己ベストが最も遅かったにもかかわらず決勝進出を決めた。

迎えた決勝。「楽しんで、考え過ぎないように走ろう」と競技に集中。日本を代表する選手と肩を並べても緊張はなかった。田中が600㍍地点でスパートをかける。スピードが上がったレース展開についていくことができず、7位から9位に順位を落とす。ラスト300㍍でスパートをかけ8位になるも、ゴール直前で抜かされてしまった。わずか0・38秒、約1㍍で入賞を逃し、ラストスパートで競り負ける課題が残った。それでも「すごいメンバーと走れてうれしかった」とはにかみ、憧れの地に立てた喜びをにじませた。

根拠のある強さ

立大への入学が競技との向き合い方を変えた。「与えられたメニューをやって強くなるのは当たり前。自分の考えてできないとさらに強くなれない」。

監督に与えられた練習をこなすのではなく、学生が主体となって練習できる環境が魅力的だった。

持ち味のスピードを生かすため、集中的に取り組んだのはスタミナ強化。最後まで走り抜ける強い心肺機能づくりを図った。自分で考えた練習を重ねるうちに心境に変化が表れた。高校生まではレース前に緊張し、楽しむことができなかった。自分を追い込み、走る意味すら分からなくなる時期も。しかし「自分で考えて練習してきたから大丈夫」。 自分の課題と向き合って練習してきた経験が、根拠ある自信に。根拠ある自信がレースを楽しむ余裕に。心の余裕を持てるようになったことが試合での強さにつながった。

陸上人生でかなえたい目標は日本一。「学生で1位になっても1番じゃない」という中学時代の恩師の言葉がきっかけだ。今年は決勝進出で目標達成に大きく前進。来年は果たせなかった入賞を目指す。一歩一歩着実に前へ。静かに闘志を宿す19歳が日本の頂点に立つ未来はきっと遠くない。(田川怜奈)
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