【陸上競技部】日本選手権直前!立大を背負って出場する上野監督にインタビュー!

日本最高峰の戦いが今日、大阪・ヤンマースタジアム長居にて行われる。東京オリンピックの選考も兼ねており、注目度が高い今大会。数多くの実力者が集まる大舞台に、立大からは上野監督が男子5000㍍に出場する。監督という立場ながら日本選手権へ。どんな思いを持ち出場を決めたのか。お話を伺った。

カメラに向かって笑顔でポーズをする上野裕一郎監督

ー11月15日の日体大記録会5000㍍で日本選手権の参加標準記録A(13分42秒00)を切られましたが、この大会でタイムを狙っていましたか

いえ。元々走ることは監督業と勧誘とそういう部分含めて二刀流というか。メインはどちらかというと選手勧誘のためです。ペースメーカーとして「この子これくらいで行きたいんだけど、良いペースでいってもらえない?」ということをよく(選手の先生に)お願いされて記録会には出ています。どうやったら選手が来てくれるかなと思った時にやはり走れるのだったら走りを活かして、学生がいい記録が出るように少しでもサポートして。私たちのチームにも欲しい学生を勧誘の1つとして続けています。全く日本選手権のための練習はしていません。本当に勧誘プラス、今の学生を育てることが私の目的ですので。元々タイムは持っていたので、練習をしていく中で体が戻ってきた感じでたまたま出た記録。狙ったわけではないです。

ーそうなると自身も驚きという形

そうですね。高校生がその大会で13分45秒から50秒のタイムを出したいということで、調整しないと自分でも厳しいかなと思ったので。2週間半くらい選手と練習をしながら練習も見ながらうまく合わせていって。それに近い体調をつくろうとは思っていましたけども、そこまでいくとは全く思ってなかった。

ーいつもはペース作りで出られて記録としてはDNF(途中棄権)が多いと思うのですが、今大会記録を残したのに理由は

予定より3000㍍の通過が3秒くらい早かったのですけど、まだ高校生がいましたのでそのまま流していったら離れてしまったので。レースの流れ的に後ろに何人も実業団や大学生、高校生がいましたので私が遮断するわけにはいかないなと思ったのでそのまま流れで行きました。4000㍍通過のタイム見た時に「これ日本選手権の標準出るんじゃないかな」と確信していたんです。「もしかしたら大幅にいくぞ」と思ったのでそこは勧誘はしていたんですけどそれは抜きとして、最後の1000㍍は自分のためにある程度行ってしまったというか。あまり良くはないんですけど(笑)そういう流れで出た記録でなんとも言いづらい(笑)

―練習はしていましたか

いや全く。選手たちと一緒に走る以外ではないです。もうそこまでやるという気持ちはない。アスリートじゃないので。(-監督がメイン)はい。だから朝練も選手にメニューを出して走っている周りを少し走ったり、途中で合流したりだとか。後はポイント練習であまりにもきつくて引っ張る子がいなければその子のところを引っ張ってあげたりとか。選手たちには「ちょろちょろしているなー」って思われているかもしれませんし。どう思っているのかは分かりませんけれども。あとは勧誘で先生に呼ばれてほぼ全力走の形でタイムを引っ張ったりとか。1日に3レースを引っ張っていたりとか。そういうのがトレーニングになってしまったんじゃないかなと思います。色々な方々に感謝しつつ、これからまたいい学生を引っ張ってこれるように色々努力して、学生を育てるというのも私のメインですし。立教大学から託されたことは箱根駅伝だけではなく、勉学の方もしっかりやらせて。単位を取らせて自分の目的をもたせて卒業させるというのが私に課せられた責務だと思いますので。そういうことをしっかり補いつつ、箱根駅伝に近づいていけたらなと。これが本業なので。

ー監督業との兼任ですが今大会日本選手権に出場する理由

日本選手権前日も学生メイン練習と当日の朝練を見たり、次の日もポイント練習見たりとあるので。目的としては今回、高校生が1人出るんですが、その子の勧誘というより先生とか地区の高校の先生方とも話に行くという目的も含めて空き時間に出るという形で。目的は大きく言うと立教大学のアピールというか。私も監督業しながら選手勧誘しながらある程度立教大学の良い形でのアピールができればいいかなと思っていましたので。それが陸上のこうした大きな場でできると。宣伝効果とはいかないですけどユニフォームにはユリのマークがほってありますので、それを着て立教の名前を呼ばれれば検索も増えるだろうし。そういう中で少しでもプラスになればなと。どんな結果というよりも一番はやっぱり立教大学長距離で上野監督に指導を受けたいという学生が増えるのと立教大学の名前が少しでも世の中に出て広まってくれれば相乗効果じゃないかなと思っています。

ー日本選手権に出場に対して奥さんやお子さんの反応は

長女は、日本選手権に出ていたりしたことは認知していて、多少わかってはいます。一番下の子はやっと年長になって、真ん中が次女で小学校2年生になっているので。やっと物心がついて何となくわかってくれているんじゃないかなと。一番上の子は小5なので、帰ると「日本一決定戦終わったの?」とか言って。「まだ終わってないけど」という話を時々するんですけど。「それは勝てるの?」と言われて「それはわからないけど」とそう言った話で。うちの妻としては、郭先生が立ち上げたこの箱根事業に私が携わらせてもらっているおかげで本当に陸上に対して箱根駅伝に対してすごく気持ち的にもプラスになったことを喜んでくれていて。たまたま狙ってなくて今回(記録が)出たので、中々出る機会ないから「出てみたら」と言われたので。私じゃなくて学生が出さないといけないと思っている中で選手達も「面白いこと期待しています」と言ってくれたりして。行きやすい雰囲気を作ってくれました。やはり個人のレースとして出るというのは監督業の傍らちょっと気まずい部分もありますので。そういうことを後押ししてくれる学生には感謝しています。何かしら残して欲しいという家族の思いもあると思うので、リクエストに応えて頑張りたいなと思っています。

ー当日のスケジュールは朝練見てから大阪に向かう形

朝練を朝6時からやって状態を確認してから、そこから東京駅に。今コロナなので車で行こうと思っているんですけど。できる限り短時間で。選手達にはなるべく人混みに行くなと徹底しているので。それで自分がかかったら笑い事ではないので出来るだけ短期間で済まして。ぱぱっと行ってぱぱっと帰ってこようかなと思っています。次の日も朝から選手達はキツい練習がありますので。それに1泊して自分のために行くというのは絶対したくないというのはあるので。できるだけ自分のことは手短にやって選手のためにというのが私の一番ですので。それが仕事というか責務なので。自分は15分間だけ集中して頑張ってやってでいいかなと思っていますので。みんなにはキツいでしょとか言われるんですけど。色んな人に「前泊するの?」とかも聞かれるんですけど、朝練やって当日行って当日帰りますって。「そんなん絶対無理でしょー」とか言われるんですけどそれで慣れちゃっていて試合も色々なところに行くので。自分のためとはいえどそれはサブなので。ぱぱっとやって楽しんで帰ってこようかなと。

ー日本選手権とはどんな大会ですか

大学の時から出ていますので。大学生の時は今の学生と同じ立場として。私は中央大学だったのですけど、中央大学の名前を背負って出るのでその大学に少しでも貢献しないとなという気持ちで出て。それは学生ですのでどちらかというと仕事ではなく部活動の一環なので責任はないし、自分も楽しんでやれればいいなと思っていました。社会人になると今度は会社名を背負ってやるので結果を出さないといくら会社に雇われているといってもセミプロですので。セミプロの中でどれだけ結果を残してやっていくかという勝負の世界になってきますので。今は監督やりつつたまたま出た記録でなおかつメインではないというすごく複雑な気持ちで。選手と呼ばれるのは今僕としては慣れてなくて。出たら選手なのですけど監督として立場変えずにその時15分間選手でいいのかなと。少しでも立教の名前が出てくれればいいなと思っています。今まで長い期間走りとしては苦しんでいて。世の中に出ていけなかった分、少し楽しくやってこられたらなって言うのがあります。難しいんですよね、なかなか。すごい目的をもってという訳ではないので。一つはやはり広告としていい形で名前が出てくれればいいかなと思っています。

―レースプランは考えていますか

全く。今年ケニア人がいるので、多分オリンピック標準を狙いに行ったりする子もいますし。まあそれにつけないから後ろでレースをするか、どっちもあってレース展開は読めませんので。まあ仮にケニア人がいなかったときのレースプランは色々かき乱してやろうかなと思っていたのですけど。それは多分うまくいかない気がするので、恥ずかしくないレースはしていきたいと思います。やはり、立教大学の名前を背負うということですので。下手なことはできないので。少し慎重になりつつ、集中してその時間だけ頑張りたいなとは思います。順位はあまり期待しない方がいいかなとは思っています。

ー去年の4月くらいの記事で「トップレベルの舞台にもう一度立って引退したい」と仰っていたが今年は引退は考えていない?

そうですね。これは自分が出そうと思って出したタイムではありませんし、ターゲットにしていたのはオリンピックの年の日本選手権。または…と思っていたのですけど。引退したからって走るのを辞めるわけでは無くて。いろんな人に感謝のご挨拶をするっていうのが僕の引退レースだと思っているので。そういった舞台で走り終わりました、「長い間応援してくださりありがとうございます」と一言、世の中の人に放っていないので。ご挨拶をするタイミングをいただいていないので。いつかそういうのが出来たらいいなっていうのが早く来てしまっただけであって。特にそれで走るのをやめるとかってことはするつもりはないです。大きなこといえば、これは勧誘の1つ。自分は選手と1番近くでランニングしながら勧誘が出来る。「立教来たら、俺が2、3年は走れるから。きつい練習があったら一緒にやろうよ」とか。自分の武器として使えることを使っていきたいなと思っています。そういう中で大舞台で引退することが自分の夢だったので。1回落ちてやめていますがほぼ。そういう中でもここまで戻ってこられたということを大切にして、機を見てそういうことはしたいと思います。いきなり、今度で引退というのはないかなとは思います。もしかしたら来春、6月の日本選手権の日に。コロナがひどくならなければ日程が戻ると思うのですけど。そこらへんで気持ちの区切りは付けて。本当に自分の自由なような走りをしていきたいなと。今も自由なのですけど(笑)ここまで本当に戻ってこられるとは思ってなかったので。中々急だったので。気持ちの整理はついてない感じですね。まだ。

―当日の目標は15分間を頑張る

そうですね。なかなか監督という立場になって日本選手権に出られるなんて普通からしたらあり得ないことですし。それを監督もやりつつ自分の空いている時間の中だったり、選手と一緒に切磋琢磨したり、勧誘に呼ばれて行って走ったりだとかをさせてもらっていることに感謝の気持ちを込めて。本当に立教大学の陸上競技長距離を任せてもらって、ある程度本当に選手にもっと寄り添って。本当は走っている場合じゃないのかもしれないのですけども、そういう中でやらせていただいている立教大学の方々に感謝を、気持ちを少しでも表せるような15分間になればいいかなと思います。

(12月4日 小松勇斗・田川玲奈)

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