【スケート部フィギュア部門】〈4年生引退特集〉銀盤に刻むスケート人生の軌跡。小泉(文4)が語る「私にとってスケートは…」

「目標は何1つ達成できなかった」

ジャッジに視線を向ける小泉

―昨年のインカレでインタビューさせていただいた時にラストイヤーの目標は「東インカレ表彰台・インカレ入賞・4級取得」とおっしゃっていましたね。今日までを振り返ってどのようなことを思いますか

まあ、結論から言うと目標は何1つ達成できなかった。でも今、去年の自分がそう言っていたことを思い出して「あ、そんなこと言ったなあ」って。夏合宿のときも同じことを言ったんだけど。私は3年間ずっと試合で全く結果残せなくて、すごいしんどい時間が多くて。3年生でやっと東インカレ・インカレに行けて。それで今年もインカレ行くっていう目先に囚われてたのかなって今振り返ってみると思います

―1年前のインカレでラストイヤーについて質問した時、「スケートが大好きだから辞めたくない」とおっしゃっていましたね

今は怪我しちゃって丸々1ヶ月滑ってないんだけど怪我した日から毎日トレーニングだけはずっと欠かさずやっているの。そのモチベーションってやっぱり1分1秒でも早く氷に戻ってきたいって気持ちだし、別に私走るのとかも好きじゃないんだけどなんかスケートのためだったら走れるし、筋トレもスケートのためだったら頑張れるし。原動力はやっぱりスケートが好きだから。早くまた滑りたいからっていう気持ちだから。なんかやっぱりスケートが好きだっていう気持ちはもう始めた時から多分ずっと変わってない。なんならどんどん自分の生活の中でスケートが占めるものが大きいなって

―この4年間、怪我やスランプなど苦しい時期もあったと思います。それでもスケートが好きというお気持ちは変わりませんでしたか

そうだね。なんか「残酷なスポーツだな」って思いながら。悔しいことはあったけど、それで練習行かないってことは無くて。なんか「練習行くか」って感じで結局試合の次の日も練習に行ったり。オフもそんなに作らなくて。練習を義務って思ってないんだよね。自分が好きなことをやっているだけって思っているから辛いってあんまり思ったこと無いし。試合で結果残せなくて「ああ、もうスケート向いてないな」とか思いながら。でも、一緒に頑張っている他大学の同期とか、立教の同期とか。後輩とか先輩とかが声を掛けてくれて。だから結果っていうよりはやっぱりみんなに喜んでもらうっていうのもなんか変だけど、みんなに「良かったね」って思ってもらえるようなスケートが出来たらいいなって思うと、ここでウジウジしている時間なんて1分1秒も無いなって思っていた

大嫌いだった部活が、かけがえのない居場所に

スケートは好きなんだけど私は部活がすごく嫌いだった。うちの部活って初心者から経験者までいて多様性はある部活ですごく良いんだけど。私は本当に大学でスケートをやりたくて「やっとスケートできる!」っていう希望を持って入部した割には「あ、なんか、みんな意外とそんなに強い熱意を持っている訳ではないんだな」ってギャップを感じちゃって。クラブチームにも入ってたからそこの方がみんな同じようなモチベーションでやっていて、部活に居心地を感じなくなっちゃったの。ほぼ3年間そんな感じで、部活にいてもみんなと練習するだけで声もあんまりかけないし。
「フィギュアスケートは個人スポーツだから」って思っていたんだけど、そう思ってた自分が今年1年で劇的に気持ちが変わって。みんなが私のことを受け入れてないっていうよりかは自分が部活に心を閉ざしていたんだなって。自分が試合に出られるのは自分1人のお陰じゃなくて。立教大学のスケート部に入っているから試合に出られるし、練習環境は昔のOB・OGの先輩がこれまで培ってきたものとか伝統があるからとか、部員がいるからとか、いろんな人が関わっているから練習もできるし。部活だけじゃなくて所属クラブのチームの方でも仲間がいて、先生がいて、コーチがいて、その中でやって初めて試合に出られるから、あの試合で滑る2分半って自分だけで作っているものじゃないんだなって思った。そういうふうに思っていくうちに「スケートって個人競技だけど団体スポーツだな」って。今まで1人でやっていたのは自分だけで、本当は応援とかも同じ仲間だから応援してくれるのであって、それってやっぱり団体スポーツと一緒だなって。氷の上で滑っているのは1人だけど、そこに懸ける思いっていうのは自分1人だけの思いではなくて。全ての試合において「2分半は自分だけで滑る時間じゃないんだな」って思ってから最後1年は部活すごく楽しいなって思えて。就活もすごくしんどかったけど、部活に行けばみんなに会えるし。部活の雰囲気が年々良くなってくのを肌で感じていて、後輩たちが積極的に部活の運営に携わってくれるようになったりとか、何も言わずにサポート回ってくれたりとか、級とか関係なく学年の垣根を越えてみんなで部活を作り上げていってるっていう雰囲気があって。それはもう後輩と同期のお陰。その雰囲気を作ってくれた先輩たちもそうだけど。そういうのを今は愛おしくて居心地を感じてる。だから早く就活終わらせてみんなと部練後のグダグタな時間過ごしたいなとか。そういう風に前向きな気持ちになれた。周りのみんなが気付かせてくれたんだなって。練習も楽しくなるし、出来てない子に声を掛けてその子の“出来る”を一緒に体感できるっていうのも部活ならではだと思うし。そういうことを思わせてくれた1年。技術面とかでもいろいろあるけど私の中で今年1年大きいこと。私にとってかけがえのないものになった1年ですね

小泉の代名詞・『hallelujah』

スタート位置につく小泉

ー先生が「人を感動させる、心に残るプログラムを」という思いで作ってくださった『hallelujah』。試合を重ねる毎に「先生の言葉の意味が分かってきた」とおしゃっていましたね。プログラムの完成形は見えてきましたか

そうだね。私にとって1個上の先輩の存在って大きくて、「あんな風に引退したいなあ」ってポワーンと思っていて。『hallelujah』を選んだのは白い衣装を着たくて、ボーカル入りの曲を踊りたくてみたいな条件で選んだんだけど、もともとすごく好きだったから。振り付けのときに先生が「最後だから結果を追い求めるのもそうだけど、スケート人生の集大成として人に思いを届けられるような。『あ、引退しちゃうんだ』ってポロっとするようなプログラムを一緒に作れるといいね」みたいな話をして。まあそのときは「そうすっよね!」みたいな感じでまだ実感なかったけど、試合を重ねて、部活でもクラブでも曲かけたりして、みんなに「いいね」って言われて。クラブチームの方ではママとかに「咲ちゃんの『hallelujah』大好き」みたいなことを言ってもらえたりとか。改めて人から声を掛けられると「そういう風に見えてるんだな」って。ジャンプ飛んだ、すごい、というよりかはプログラム全体として印象に残るというか。「『hallelujah』と言ったら咲さんだよね」「そういえば去年の引退生の咲さんのプログラム『hallelujah』だったよね」みたいな。そういう風に印象に残る、心に残るようなスケートをしていきたいなって。
東インカレで予選落ちちゃった後にすごく辛かったしすごく悔しくて、「ああもう…またこれか…」って思ったけど、また違うゴールが見えたというか。結果ばっかり追い求めるんじゃなくて、どんなに頑張ってもあとちょっとで引退するんだから、それなら結果より自分が納得しつつ周りに「よかった」って言ってもらえるような演技をしたいなって思って。先生の言ってる意味がなんとなく分かってきた。もっと滑って、ジャッジさんだけじゃなくて人の顔を見たりとか、自分がニコニコ滑ったりとか、そういうところを意識するようになっていって。自分自身プログラムに対する、試合対するモチベーションとか気持ちが変わっていってるのかなって思った。『hallelujah』のプログラム全体を楽しもうって思うと自然と良い演技が出来るようになったりとかしたかな

―東インカレの結果があったからこそ肩の力を抜けて

東インカレはあれはあれでよかったんだと思う。悔しいけど、そういう風に気付かせてもらうための試合だったのかなって。それで良かったんだなって

置かれた場所で咲きなさい

―後輩にメッセージを残すとしたら

12月の新人戦のときにある後輩が大寝坊して集合時間に遅れて来たんですよ。それを怒らなければならないじゃないですか。私たちも割と厳しいと口調で怒って。でもすごいブスーッとしてるから解散した後に私対3年生で全員で1〜2時間話したの。下の代は東インカレに出るレベルの人たちが私の代と比べて倍以上はいて、経験者の人数が多い分「こういう考えでこういう部活を作っていきたいんです」っていうのがたくさんあって。「この子達は自分たちが楽しければ良いっていうよりかは、部活をより良くしていくにはどうした方がよいのかをすごく真剣に考えてるんだな」って思った。私たちが「こう考えなさい」とか強制してるわけじゃないのに自然とそういう風な考えで部活に臨んでくれてるって言うのを知ってすごい嬉しくて。改善していきたいことも言ってくれて。私たち4年生が至らなかった点・できなかったこともいっぱいあるから、ダメなことははっきりダメっていって良いし、改善したいとこは自分たちの意識でしっかり改善していって、「立教スケート部って仲良いよね」「楽しそうだね」って活気あふれる部活を作って欲しい。部活の仕事を義務って考えないで、とにかく楽しんで、スケートの競技も部活生活も前向きな気持ちで頑張って欲しいなって。
本当にあっという間だよ。わたしのスケート人生において何一つ後悔がないの。怪我も今年インカレ行けなかったことも悔しかったけど後悔ではない。「もっとこういう風にしておけばよかった」ってことは何もない。与えられた道ですベストを尽くせばそれが自分の道になる。それを自分の道にできるかどうかは自分次第。環境とかに文句をいうんじゃなくて、与えられた道でただひたすらベストを尽くし続ければそれがいつか自分の道になるから

私にとってスケートは、「私の全て」

スピンの前に一呼吸置く小泉

―小泉さんにとってスケートとは何ですか

私にとってスケートは…。なんだろうね。私自身の人生でもあるし、もちろん好きなこと。趣味でもあるし特技でもあるし。私の全てかな。私の全てだと思う。スケートを通して出会えた仲間もそうだし、スケートを通して経験できたこともそうだし。想像できないけど、スケートがなかったら多分あの仲間たちには出会えなかったし。部活もクラブの仲間も、他大学の同期も、体育会本部のみんなも。スケートがあったから彼女たち彼らに出会えて。スケートをしている時に楽しいとか嬉しいとかよりも、辛くて苦しい時間の方がすごく多かったかもしれないけど、その時間があったからこそ「ああ、嬉しい!」とか「はあ、楽しかった!」って思うこともあって。そういった意味でこの4年間スケートが私を成長させてくれた。スケートが私の原動力でもあり、私の思い出でもあり、仲間でもあり、うん。私の全てかな

(2月10日 取材・編集 阿部愛香・大上文・大類遥)

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