【ボート部】M2X野村・渋井コンビ最後の戦い!! 「最後全部出し切れた。ありがとう。大生頑張れよ」

秋だ。多くの大学スポーツにとって、秋は別れの季節。集大成の舞台で、選手たちは最後まで「革進」を続ける。

最後の大会でも、いつも通りのリラックスした表情を見せる2人

1025日から28日にかけて開催された第96回全日本選手権大会。ダブルスカルの部において、立大からは野村(済4)・渋井(現2)コンビが出場した。予選で4位となり、迎えた敗者復活戦。息の合ったストロークで最後まで力を出し切ったものの、惜しくも2位。最終日まで残るという目標に、手は届かなかった。

ゴール後、野村は仰向けに倒れた。“引退”という現実が、突然彼を襲ったのではないかと思われた。が、大会後のインタビューに答える野村の表情はとても清々しいものだった。「(倒れたことについて)キツイからね(笑)。こうやって(漕ぐ姿勢)やってるのが疲れたから(笑)」。敗者復活戦時のゴールタイムは7分5秒。予選から11秒もタイムを上げた。「最後本当に今ある全部出しきれた。悔いが微塵もないって言ったら嘘になるけど、1番のレースができた」。

最後のレース。2人は全力を出し切った

渋井とコンビを組み始めたのは半年前。今では息ピッタリの2人だが、はじめからそうだったのではない。「船のバランスも悪かったし、水もかかっちゃうの、真冬なのに」。当時ボートを始めて1年も経っていなかった渋井は、まだまだ発展途上。2人の猛特訓が始まった。その中で、野村2学年下の渋井からも意見を言いやすい環境作りを心掛けた。

雰囲気とは裏腹に、練習メニューはとても厳しいものだった。「1年生の冬場でそういう風に厳しいメニューで漕いでたっていうのは、結構キツかったと思う」。だが、いかなる時でもガムシャラに練習に取り組む渋井の姿を見て、「あ、こいつとなら勝負できる」、そう感じた。

成長していく渋井から、野村が受けてきた影響は少なくない。基礎を1から教えたことで、自分もその確認ができた。また、渋井のひたむきな姿勢に触発され、自然と練習にも腰が入るように。そして何より、最も変化したのはボートに対する想いだった。「大生(渋井)と組むことでボートが楽しくなった」。半年間、苦楽を共にしてきた2人の間に生まれたのは、唯一無二の“絆”。代わりは利かない。今大会前、野村はコーチの所へ「(渋井と)全日本もいかせて下さい」と自らお願いしに行った。最後悔いのないよう終わるためには、渋井の存在が不可欠だった。

カメラに向かって優しくほほえむ2人。非常に落ち着いている

レース後、野村は渋井に対して、「もう1回やりたいね。でもそれはできないから、大生頑張ってね」と声を掛けた。右肩上がりで成長を続けてきた2人にとって、成長のゴールはもっと先。もっともっと、強くなれるはずだった。しかし空しいことに、何事にもいつかは終わりがやってくる。絶対的だった野村・渋井コンビも、その例外ではない。

全日本の2週間前、1314日に開催された東日本新人選手権大会シングルスカルの部において、優勝を果たした渋井。「自分が優勝したような気持で嬉しかった。こんなに漕げるようなったんだなって」。2人が水上で共に戦う姿はもう見れない。だが、2人が引っ張ってきたレールはまだ続いている。ある意味では、野村・渋井コンビの戦いはまだ終わっていない。「引退後にインカレで表彰台に立っている(渋井の)姿が見たい。本当の意味での2人のゴールは、まだ先にある。

秋だ。多くの大学スポーツにとって、秋は別れの季節でありながら、始まりの季節でもある。それぞれが抱いた「志」を胸に、選手たちは新たな1歩を踏み出す。

11日・合田拓斗)

 

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